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2007年4月6日金曜日

『復讐と言う動機は厄介だからな』


プロジェクト管理に関しての良書。
そりゃあ僕は実際のプロジェクト管理なんてまだしたことはないけど、規模に関わらず、グループを管理する立場にいた経験はあるものだから、少なからず相似するところはあったから、面白く読めた。
著者はExcel開発チームにいたプログラマであり、現在はとあるソフトウェア会社を設立した。
一般的に言われてる管理者の心構えとは結構逆のことを言ってて新鮮で、それら一つ一つについて合理的な説明をしているものだから、説得力もかなりあった。
…過去30年間の少なくとも2ダースの研究が示しているのは、仕事を完了させたり、仕事を成功させることを、報酬を期待して行う人々というのは、報酬をまったく期待せずに行う人々ほど良いパフォーマンスを示さないということだ
彼の結論は、報酬(あるいは賄賂)は職場では機能しない、ということだ。
(中略)
それは、彼らがご褒美のクッキーがないと仕事が出来ないほど自主性を欠いているのだとほのめかすことであり、侮辱的で人を貶めるものだ。

日本的に言うと、「好きな仕事を探してやれ」ってことなんだろうな。

あと、一つの作業を黙々とこなすのと、複数の作業をマルチタスク的にこなすのが、どちらかが効率的なのかと言うことをわかりやすく説明していたのも面白かった。
人間の頭脳をCPUに準えて話は進んでいたのだが、つまり、一つの作業を黙々とこなす『シーケンシャルタスク』の場合、頭の切り替えが必要ないから、そのことだけを考えて没頭出来る。
他方、複数の処理をこなす『マルチタスク』の場合、頭の切り替えがそのたびに必要なわけだから、それに必要な『切り替え時間』を総合すると、圧倒的にマルチタスクの方が非効率だというのだ。
まあ記号化するとこうなるのだが、実際に即してみると結構わかりやすい。

例えば明日、英語と数学のテストがあるとする。
僕は普段何の勉強もしないアホなので、前日になって教科書の埃を払ってとりあえず開いてみるわけだけど、時間的に考えて同時に勉強したほうが早いと思う。
だから僕は数学の問題が一問終わると、英語の翻訳を1行することにするんだけど、数学の問題に戻ってきたときに、
・次の問題はどこか
・さっきやった問題はどういう問題だったか
・解法はどういう要領だったか
と言うようなことをいちいち思い出さなければならない。
英語に戻ってもそうで、
・次の文はどこか
・今までの文脈はどういう内容だったか
等等、色々ある。
それに、両方に共通することは、それぞれの教科書を閉じたり開いたり、ノートをめくったりする手間が発生するということだ。
とは言え、それは人間時間に換算すると本当に微々たるものだけど(人間の頭は機械より高性能だから)、そういう面倒くさいものは、つまるところ集中力を左右する。やることが多ければ多いほど、それは挫折する確率を等比数列的に上昇させる。

と言うことで、実際問題に置き換えてみても、確かに、とヒザを打てるものではある。

あと、非常に興味深かったのが、ミクロ経済学の、代替財と補完財による需要と供給バランスの説明のくだり。
ほかのすべての条件が同じなら、補完財の値段が下がるとき、その製品への需要は増える。
例えば、マイアミへの航空運賃が下がると、マイアミのホテルの客室の需要は増える──それは、多くの人がマイアミへ行くようになり、客室を必要とするからだ。
コンピュータが安くなれば、より多くの人がそれを買うようになり、それにはオペレーティングシステムが必要なので、オペレーティングシステムに対する需要は増え、それはオペレーティングシステムの値段が上がるかも知れないということを意味する。

これは一部を抜粋したものだが、こういうわかりやすい例を用いて説明してくれるので、頭脳が間抜けな僕でも、ミクロ経済学の先っちょぐらいはわかるようになった。

コアになるのは、如何にしてチームを効率よく動かしていくかと言う、仕事的な意味でのプロジェクトマネージメント論に関する本なのだが、その外堀を埋めるように、数々の逸話がある。それは採用に関する話であったり、企業戦略に関する話であったり、無能な上司とのケンカに関する話であったりする。
こういう系の本では『人月の神話』がバイブルとされているが、あれは書かれた時代が時代だし、完全に経験者向けの本らしいので酷く難解らしいので僕は手をつけにくいのだが。

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