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2008年3月27日木曜日

『世界中何もなかった それ以外は』

夕暮れ海岸
4年間は長かった…。
最後の授業が終わったときに、僕が真っ先に感じた感情は達成感だ。自己満足に過ぎないけど、4年間もよくやったと思う。お疲れ僕。

そう、以前少しだけ触れた追試のことについて少し触れよう。あれは専門学校と言う場を端的に表した出来事なので。

追試と言うのはご存知の通り、通常の試験に落ちた人のための救済措置だ。
僕も対象になったその通常の試験とやらは、数ヶ月かけて行われた産学連携プロジェクトのことで、その成果物の善し悪しによって点数が決まり、点数が一定以下なら追試の対象になる、と言うものだ。
そのプロジェクトが失敗に至った過程と言うのはいくつか記事にしているのでここでは何も語らないとして、問題はそのプロジェクトが終わった後である。

納期から授業終了までの約1ヶ月と言う期間、プロジェクトの成果物が採用されなかった4クラスはなかなか時間内に終わらせることが難しい量の課題を毎日与えられていた。
担当の教師は一人だったため、課題扱いにはなっていても200人近くの課題を短時間で見ることは出来ないだろう、と僕は思っていた。
が、結論から言えばどうやら見たらしい。プログラムに関しては後述するが、紙媒体として提出したものに関しては見たらしい。…睡眠時間がほとんどなくなるまでに。
明らかに担当教師のキャパを超えた量の課題を出し続けると言うのは、ハッキリ言って無策にも程があるが…。
曰く、「成果物が採用されたグループはもっと時間を使っている」そうだが、そこに平等性を求めても仕方ないと僕は思う。平等性を求めるあまり、同じだけの時間を何らかの製作に費やさせようとしたわけだ。一理はあるがなんとも屁理屈に聞こえる。
ではなぜ課題扱いにする必要があるのか?単純だ。「これは課題ではない」と思われれば生徒は何もしないからだ。

課題提出率が一定ラインを切ってしまうと自動的に3月の未認定補講と呼ばれるものに参加することが決定されてしまうので、それを出汁にして課題をさせよう、と言う腹積もりだったわけだ。(ここで言う未認定補講と、上述した追試と言うのはまた別だ。追試はあくまで試験に関することであり、未認定補講と言うのは課題提出率・出席率に関することだ。)
さて、この判断が担当教師の一存によるものなのか、それとも教師側での協議の結果なのかどうかはわからないが、とにかく「採用されたグループが馬鹿を見る」ようなことは避けたいあまりに「平等性を求め」て採用されなかったグループに「キャパを超えた量の課題」を出すに至ったわけだ。生徒側からすると、採用されるされないは正直どうでも良くて、むしろ要件定義が曖昧で、さらにスケジュール的に無理があるのを何とかしてもらいたかったというのが本音だが…環境も整ってないのに士気が上がるわけがない。

翻って生徒側。
はじめに言っておくと、上記に「時間内に終わらせることが難しい量の課題」と書いたが、僕が時間内に終わらせることが出来なかった課題なんてひとつもなかった。
そう書いたのはもちろん、生徒の8割から9割が終わらせることが出来なかったからだ。「一部を除いてこんな課題の量、居残りせずに出来るはずがない」と言うのが大勢の認識だった。
勿論、進んで居残りしたいやつなんていやしない。しかも、上述したように「誰から見てもキャパを超えた量」だから、最終的には承認印を押すだけ押して内容までは確認しないだろう、と踏む生徒がこれまた大勢いた。
よって、プログラムに関しては出来てる人のものをコピーさせてもらえばいいじゃんと言う発想になるのは当然だったし、比較的早い段階でそうした行為が横行した。(一応言っておくが僕がコピーさせるなんてありえない。コピーが発覚したときに巻き添えを食らうのは御免だ。)

2月3週目のある日、「昨日徹夜でチェックしてきた課題を返却する」と言って2週間ほど前の課題を返却してきた。返却されたのは紙媒体のドキュメントのみだったが、明らかにコピーだと思われるものや手抜きだと思われるものは再提出扱いになっていた。まあそこに関しては自業自得だから別にどうってことないが。とにかく「ちゃんと見ているぞ」と言うことをアピールしたかったのだろう。そのアピールが誰に対するもの、否、手抜きした人真面目にやってる人のどちらに対するものなのかはよくわからないが恐らく両方だろう。

4週目を残す段階になって、追認のことについて何の告知もないことのほうが僕には気がかりだった。4週目は僅か4日しかない。追認対象者は40人ほどいる。
それだけの人数の追認を2月中に見ようとなると、結果として「内容の如何問わず出せば承認」になるか「3月まで伸びるか」の2択だと僕は思った。担当教師の性格上、前者はあまり考えられない。真面目にやってきた者が馬鹿を見るということを嫌うからだ。ある一定の水準を突き通すだろう。この性格、エゴと言うやつが皮肉にも自身を追い込む結果になっている。約200人に対して毎日のように出す課題のチェックと、40人に対する追認のチェックの同時を1週間でしないといけないのだから。プライオリティは追認のほうが高い。

と考えたところで、この段階では追認のことは何もわからなかったから取らぬ狸の皮算用でしかないのだが…。
とは言え、心配なことには変わりない。僕は3月の4日から11日まではミッチリ忙しい。学校のことにかまけてる暇なんてない…!なんとしても2月中に追認に合格しないといけない必要が僕にはあった。

4週目の月曜日、残り3日を数える日に、追認の話が遂に出た。
それはとあるシステムの上流工程を終わらせろ、と言うもの。システムの概要が書いてあるドキュメントだけが渡され、それを元にDB設計まで終わらせて、担当教師の承認をもらえば追認は合格となるものだった。
生徒からは怨嗟の声さえ聞こえた。「こんなの出来るわけがない」と。真面目に授業受けてたら出来ると思うけどな。基本情報技術者試験の問題より簡単だし。

が、まあ簡単とは言っても正直言って物理的な意味で厳しい。追認対象者になっていないほうが多いため、授業では今まで通り課題が出ることは間違いなかった。学外の時間を使うしかなかった。
仕方ないから嫌々ながら自宅で一晩で全て終わらせた。本当にこういう焦ったようなことをするのは嫌いなんだが、場合が場合なので仕方ない。
当然僕以外に出来てる人なんていなかった。そりゃあこれだけの量、一晩でもなかなかこなせないだろう…。
僕の力量がスゴイとかそういう話ではなくて、ひとまず形だけ仕上げて担当教師の反応を見たかったから、クオリティはともかく形だけ先に仕上げたというような具合だ。
30枚ほどになるドキュメントを抱えて行くと、案の定駄目出しを食らった。その反応を伺ったところ、それなりに細かいところまで見られることが判明。もちろんポイントはあるようだったので、そこをしっかり押さえれば承認は貰えそうな感じだった。
人によって見るレベルを変えるということを絶対にしない先生なので、これは追認対象者の半分ぐらいは3月も出校する羽目になるんじゃないか…?と思った。と言うのも、先生も先に言ったように忙しくないわけがないため、見る時間が限られてるわけだ。多くて一日2時間程度。少ない日だと30分に満たない。
そんな少ない時間で40人ほどのドキュメントを見るわけだから、そもそも物理的に無理がある。
つまり、僕の目的である2月中に終わらせるためにはただただ拙速のみしかなかった。

結果として、2月中に承認を貰えたのはわずか4人だった。3月の上旬もずっと行かなければならなかった、と言う話を友人から聞いて、間一髪だったと胸をなでおろした。

話が逸れすぎた。授業内の課題の話。
ドキュメントのみ返却することが度々あり、その都度再提出を食らい、新たにドキュメントを修正している間に本来の課題が出来ずにコピーに走る、と言う人が後を絶たなかった。
あるとき、担当教師が「プログラムをコピーした人は挙手しろ」と言った。「正直にコピーしたと言えば、プログラムの書き取りを10回で済ませてやる」と。

補足するが、プログラムのコピーは学内じゃあ重罪だ。停学にこそならないが、その処分の重さは見ていても嫌気が差す。
プログラムの書き取りと言うのは、ちゃんと動作するプログラムのソースコードを紙に鉛筆で書き出す、と言う意味だ。
もしコピーしたプログラムのソースが100行になるようなら、100回書けば計10000行になる。そういう処罰が待っている。反復動作をあえてアナログでやらせるところに嫌らしさを感じる。

ここで、コピーしたことを正直に言えば10回で許してくれるという取引があり、たぶん3~4割ぐらいの人が挙手し、取引に応じた。
これだけなら、正直に言わないほうがどう考えても得だ。何故なら、コピーした人に挙手を促すということは、コピーを自身では探さないと言っていることと同義なのだから。わざわざそんな回りくどいことをしなくても労力を割けばコピーした者は割れる。
だが、本当の問題はここから始まる。200人のソースをツールを使って解析してコピー者を見つけ出すほど余裕があるわけがないのだ。

そこで取った行動は、なんと、挙手した正直者たちに全生徒のソースコードにアクセスする権限を与え、検分するよう指示したのだ。
挙手しなかったコピー者を発見すれば、発見した正直者は処罰を免除されると言う。
つまり、当人たちの言葉を借りれば「友人を売れ」と言うわけだ。コピーした人がいるということは元ファイルを提供した人がいるということ。それも含めて洗い出せ、と言ってコピー用Excelシートまで用意して公開して、そこに逐一クラス記号と出席番号が書かれていった。
この時点で教室は騒然。しばらくの間2chですら話題になり、教育委員会までお出ましした模様。
事件の顛末はわからないが、言うほど被害を受けた人はいなかった様子。さすがにあそこまで表沙汰になれば水に流すしかなかったんだろう。最後の授業のときには謝罪までしていた。

さて、ここが非常に議論の余地があるところだ。果たして誰が正しいのか?
ちゃんとやっていた僕から言わせれば、何を言おうとコピーに関係したやつが悪い。
だが一方、あの課題の量が生徒・教師双方のキャパを超えたものであったことも事実。
そして、生徒にコピーした者を探すように指示したこともやりすぎだ。
2chでは完璧に教師側が悪者だったが、僕はどっちもどっちだと思う。と言うか、それ以外の解釈もないように思う。
だけれど、世間的には教師側が悪者なのだ。教育委員会が動き出したから。
もっとも、教育委員会の話も実際のところ眉唾だが。2chへの書き込みと友人からの話しか情報がなく、教員側からは何の説明もなかったからだ。
不当・不正と言う観点から見れば悪いのは生徒のほうで、立場的に間違った対応をしたのは教師。落としどころはここだと思う。でも結果的に謝罪したのは教師なのだ…。

僕が4年間行っていたのはコンピュータの専門学校で、僕の所属する学科からはPG・SEとして就職する人たちが9割を占める。
学校の課題程度のプログラムをコピーしたとかさせたとかで一喜一憂してる彼らが、激務なしにPG・SEが務まるとはとても僕には思えない。
端的に言うと「合ってない」とすら思える。誰しも自分にあった仕事があると思うが、その観点から見れば彼らはとても自己分析を行っているとは思えない。燃えてから火の元を確認するタイプの人ばかりだ。
だから、「新入社員の何割かは3年以内に辞める」と言うのはまったくもって実感を持って正しい統計だと思うし、それだけ自分の得手不得手が解っていない。
まあ、それを言えば僕だってわからないと思うけど、機械相手の仕事や効率性を求める仕事は僕の性にとても合ってると「感じる」。辞めないことを保証するわけじゃないが、少なくとも「こんな仕事をするつもりはない!」と激昂して退職届を出すようなことはないと確信する。

かくして僕は学生と言う身分を終了し、これからまったく新しい社会人と言う身分へとなるわけだが、正直言って期待とかのポジティブな気持ちよりも不安のほうが圧倒的に多い。でもまあそれはどんな人でもそうだと思うし、何年か経たないと一人前になれないんだから、今ある気持ちの大半は杞憂未満で終わると思うけど。
まあ…なんとかな…否、まあ、なんとかするさ。

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