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2009年4月1日水曜日

3K4万D7MON

4月1日の年度始めを以て行われるリストラ宣告なんて、かみのけ座星雲に住む人にとっても、熱水噴出口に住む白いエビにとっても、エイプリルフールのジョーク以外には解釈しようがないわけだけど、現実はなかなかどうして無常だった。

まるで氷から水へと緩やかに変わるように、入社からちょうど一年目にして、僕は有職者から無職へと転移した。

サーバーの定期チェックをしていた僕へ行われた突然の宣告は、僕の顎と頭蓋骨の接合部を乖離するには十分な威力を持っていた。
同時に、猫に追われたネズミのような無力感が僕を襲い、その比喩の通例通りに窮鼠となるべく、プログラムにイースターエッグを加え、さあ後はビルドするだけと言うところで、上長が僕からIDカードを取り上げたものだから、僕は怒り狂ってキーボードを机にたたき付けた。
その振動が波動関数的に真向かいにいる社員に伝わり、社員の肩が脱臼した。肩が脱臼した音を聞いて、隣の社員の鼓膜が逃げ出し、それをゴキブリだと勘違いした女子社員が、バルサンと間違えてマグネシウム合金に火をつけるものだから、フロアの一部がとても高温になった。

事態を重く見た僕は、キーボードのWキーだけを胸ポケットに入れて、今後使用者が笑えないようにした後、私物を焼却炉に放り込んだ。口を開けた焼却炉は僕に何か言いたそうで、つい、仕事をしているよりは焼却炉と話をしているほうが建設的なのではないかと思ったが、宗教に反する思考だったので頭から薙ぎ払った。

駅へと向かう途中、母親と近くのスーパーに買い物に来たらしい小さな女の子が僕を指差し、「ママ、あの人も春休みなの?」と質問していたから、母親の口をゼムクリップで閉じた後、僕は出来る限り優しい口調で「長い春休みさ」と言った。女の子は「そう、私は春休みを利用して買い物をしてるの」と発言したので、長期休暇を利用しないと近所のスーパーにも来れないぐらい不自由な生活なんだな、と想像して泣いた。ゼムクリップも泣いていた。遠くを見るとパトランプが光り始めていた。

駅に着いて定期券を改札に差し込むと、改札機からWindowsMeの起動音が聞こえた。何が起こったのかと駅員に尋ねてみると、「今起動しましたね」と答えたので「再起動の間違いじゃなく?」と質問した。返答は得られることなく、僕は別の改札を通らされた。
駅のホームで電車を待っていると、通過・通過・回送・通過・通過・回送…と言う順番で目の前をいくつもの電車が通り過ぎていった。あまりに規則正しいので、この駅に止まる余地はないと判断した。確認すると、ダイヤ表は真っ白だった。
駅員の存在価値が疑わしくなってきたので、それとなく業務を尋ねてみると「販売業務ですよ」と言われたので、試しに一本買ってみた。
コーラの空き缶にケータイのアンテナが生えたそれは、いまひとつ使い方がわからなかった。缶にペプシを注いでみるとブザーが鳴ったので、もしやと思ってアンバサを注いでみた。底からスーパーひとしくんのセロバージョンが出てきたので、帽子についていたボタンを押下すると、人口音声らしき声が聞こえてきた。

「上記に本当の出来事は含まれていません」

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