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2007年9月25日火曜日

大阪→奈良→三重→愛知→静岡→神奈川→東京→埼玉→群馬→長野→新潟→富山→石川→福井→滋賀→京都→大阪

その日僕は午前中は自動車教習に行っていて、Dは仕事だった。僕のほうはともかく、仕事帰りにそのまま旅に出るというのはなかなかタフな行為であり、やっぱり旅行関係の仕事についているのは適職なんだろうな、と思わずにいられない。

僕とDが合流したのは午後16時半。Dの住むマンションまで自転車を漕ぎ、そのまま自転車をマンション内に止めさせてもらった。
天王寺に出て、関西本線に乗り換える。関西本線には快速のようなものは基本的に走っていない。確か柘植から名古屋までは走っているが、それまではずっと鈍行だ。まあ、ローカル線というのはこんなものだ。


午後の紅茶を傍らに置き、つまらない話をしながら名古屋へ向かう。


伊賀上野に到着。この頃にはもう真っ暗だ。でも別に降りたりしなかった。5年前に楓と降りたときのように、突然「赤福を食べたい」って気持ちにならなかったからだ。しかも、あの時は結局赤福なんて食べなかった。遠くにかすかに見える城まで歩いただけだった。


21時に名古屋に到着。ここで夜行特急が来るまでの間、時間を潰さねばならない。


何はともあれ、空腹だったのでひとまずきしめんを食べる。やはり名古屋と言えばきしめんだ。美味すぎて体脂肪率が5%上昇した。僕のメタボもそろそろ堂に入りそうだ。

僕とDはすぐに気付いた。名古屋の街では、夜の時間潰しは出来ない。それこそ、歓楽街にでも行かない限りは。
基本的に名古屋駅周辺はビルに内在する店舗で賑わっていて、そのビル内の店舗は大抵21時くらいで閉店してしまう。
駅周辺で開いているのは、居酒屋ぐらいのものだった。途方に暮れるまでそんなに時間は要さなかった。
地下街を歩けど歩けど店のシャッターはどこも降りていた。
22時に、唯一開いているコーヒー・ショップを見つけたので、そこで時間を潰すことにした。とは言え、ほんの30分程度だったけど。
コーヒー・ショップを出てからもまだ時間があったので、コンビニに入って立ち読みをして時間を潰した。ゴルゴ13が面白すぎて電車を逃しそうだった。

0時に無事に夜行電車に乗り込み、睡眠。どう考えても最長5時間しか眠れないので早いところ寝ておく。寝付くのに時間は必要なかった。

5時に東京に到着。天候は曇りだった。僕とDにしては珍しい天候。そこから京浜東北線に乗り換え、上野へ。電車の中は普通に人が多かった。さすがは首都だけある。スーツを着た若者が多かった。恐らく飲み会帰りだろう。
上野で高崎線に乗り換えて高崎まで。高崎に着いたのは7時半だった。このとき既に大雨だったのが、少し予定を狂わせた。
朝食を食べないと色々と始まらないので、駅構内で開いていた喫茶店に入り、モーニング・セットを注文して食べた。僕もDも朝はコーヒーを一杯飲まないと気分が晴れないのだ。

事前に申し込んでいたレンタカーを取りに行き、出発。もちろん運転はDだ。僕はまだ教習所通いのため、いくら運転をしたくでもまだ我慢すべきだった。

高崎から1時間半ほど走ると、目的地が見えてきた。

誤解しないでほしい。
僕たちは日本岩魚協会に属してはいないので、日本イワナセンターなんかに用はない。単に目的地の近くにあったからついカッとなって撮影してしまっただけだ。本当にイワナなんかに興味はない。本当だ。

吹割の滝に到着した。しかし、雨はまだ止まず、小便を漏らしてもわからないんじゃないかってぐらいの酷い豪雨だった。もちろん漏らしてなんかいない。
そんな豪雨のために、滝の近くまではいけないんじゃないかと言う危惧が僕らの脳髄を駆け巡ったが、杞憂に終わった。
だが、本当の危機はそれ以前にあった。
先ず、吹割の滝は、山ではなく谷にある。だから階段を下りなければならないわけだが、その階段が水浸しなのだ。
いや、水浸しってもんじゃない。あれは「水面下に階段がある」と言う表現が最も正しい。つまり、水に浸からずして階段を下りることは物理的に不可能なのだ。


お分かりいただけるだろうか?階段そのものが水没している。滑って転ぶどころの騒ぎじゃない。つまり、それほどの集中豪雨だったわけだ。

そして、インディ・ジョーンズやスタンド・バイ・ミーが大好きな僕らは24歳にして冒険心を抑えることが出来ずに、この豪雨の中、チャイルドのように「ハイキング・コース」へと踏み出す。もちろん経過は壮絶だ。いたるところが水没していたし、土砂崩れが起きるんじゃないかって戦々恐々としていた。当然、僕ら以外に人の影は見当たらない。


つり橋の上から。霧が立ち込めていてなかなか幻想的である。


獣道を進むと、滝を一望できる場所があったので、そこから撮影。晴れているともっと鮮明に撮れただろう。
この、川を横切っているのが吹割の滝だ。天然記念物に認定されており、『東洋のナイアガラ』として名高い。


滝の近くまで来てみた。迫力がすごい。引かれている白線が、近づける限界を示す。それより向こうは川の水があり、足を滑らすと確実に天に召される。
流れはかなりキツく、そのためか岩がとても滑らかに削られている。ツルツルだ。ツルピカハゲ丸君だ。ツルピカハゲ丸君がわかる君は確実に22歳以上だ。


さすがの鱒も、この滝は登れないらしい。そりゃあ、ほぼ直角に切り立っているのだから当然だが。


和んだ。


散策をし始めて1時間半ほど経過し、そろそろ温泉に入りに行こうと言うことで車に戻る前に、近くにイワナを食べれるところがあったので食べてみた。


なんと風情のあることだろう!囲炉裏で焼いてくれるのだ!僕の気分は既に中世ヨーロッパで虐げられている農奴である。もうもみくちゃにして♥
僕はイワナの塩焼きを丸ごと食べて、Dは珍しいイワナの刺身をその場で調理してもらって食べていた。僕も食べさせてもらったが、非常に美味だった。イワナの刺身なんてなかなか食べれるもんじゃない。



るるぶに載っていたウワサの温泉に来た。駐車場はほぼ一杯だった。昼間っから温泉に浸かりに来るとはまったく暇人が多いもんだな!僕らは旅人だから暇人ではない。暇人だから旅人になると言うウワサもあるが。
アルカリ性泉質の良い温泉だった。広いし、露天風呂からの眺めも良い。

温泉を出て、近くの道の駅に売られていた饅頭とお茶を買って食べた。
そしてまた車を発進させる。次の目的地は草津温泉だ。

草津に到着。車から出ると、普通に寒かった。町にあった温度計を見ると、15度だった。日中で15度!さすがは雪国である。もはや秋なんて超越していると言うことか…。


草津温泉の湯畑は、ウワサの通りすごい。なんと言うか、町全体が温泉の匂いに包まれているのだ。
確かにこれは日本一の温泉街だ。城崎や湯布院とは規模が違う。


この『西の河原』と言う温泉は、『さいのかわら』と読む。
有名な、親不孝をした子供が送られる、三途の川のほとりの地獄のことを『賽の河原』と言うが、漢字が違うだけで本質は同じだ。
ところどころに鬼の像が建てられ、ところどころに石が積まれていたことがそれを証明する。
さすがに温泉の中を撮影するわけにはいかなかったが、ここの温泉はとてもだだっ広い。たぶん200人ぐらいは入れるだろう。


これは『西の河原』のほとりにあった川だが、これは水ではない。流れているのは全て温泉だ。だから湯気が立ち込めている。
このように、草津温泉ではあらゆるところに温泉がある。


これも『西の河原』の園内の風景だが、見える液体は全て温泉だ。


温泉から上がり、お土産やらを購入し、屋台で適当に焼き鳥とか食べた。
Dが土産に日本酒を買うと言った。しかし、Dは運転手なので飲むことは出来ない。よって僕が試飲し、どれを買うかの指標にすることにした。僕が飲むことが出来る役得に対して憤慨していたDだった。でも、購入を決めた日本酒はとても美味かったので、僕もDもそれぞれ一本ずつ買うことにした。

2時間ほどかけて高崎に戻り、レンタカーを返却した。返却する前にガソリンを満タンまで入れたんだが、なんと15リットルしか減ってなかった。かかった費用はわずか2000円程度。これはDの見積もりの1/3だった。燃費の良い車だったのだろうか?よくわからない。

とにかく高崎に19時に戻ってきた僕らは、岐阜(過去、高山に行った帰りに寄った)や名古屋での教訓を生かして、真っ先に晩御飯を食べることにした。油断しているとまたもや食べる店がなくなってチェーン店しかなくなる、と言う事態になってしまうので、それは避けたい。
ちょうど、駅ビルの中に鳥料理を専門とする店があったので入った。
この店は群馬県のみに展開するチェーン店なのだが、非常に美味い。なんと言うか、こんな鳥料理は未だかつて食ったことがないってぐらいに美味かった。ここで出された鳥のカラアゲに比べたら、王将で出されるカラアゲなどただのジャンクフードだ。

腹も一杯になったところで、またもや夜行急行の時間まで待ち時間が発生した。
ので、駅前のカラオケで時間を潰すことにした。眠たくなったら寝ればいい、と言うスタンスで。
適当に数時間をカラオケで潰して、時間になったので駅に向かう。


深夜の高崎駅前。なんと言うか、名古屋よりも明るいかも知れない。いやマジで。僕とDの中で、名古屋株が急激に下がっていった。
駅のホームで待っている間は非常に寒かった。
午前1時に金沢行きの急行が来たので、乗り込み、疲れていたのですぐに寝た。


金沢に到着したのは午前6時だった。
駅の中2階にコーヒー・ショップがあったので、クロワッサンと一緒に購入。駅からは出ずに、すぐに福井行きの電車に乗った。
福井までは2時間ほどかかったので、その間本を読み音楽を聴き、寝た。



8時前に福井に着いた。
越前鉄道で一日フリー切符が800円で売られていたので購入した。終点の三国駅までの片道運賃が750円なので、往復するだけで十分に元を取れる。


長閑な風景が続く。天気は快晴。

芦原温泉駅からバスで20分ほど行くと東尋坊に着いた。
東尋坊は福井県屈指の名勝である。同時に、自殺の名所としても全国的に有名だ。
そこは切り立った崖で、和歌山の三段壁と似ている。
サスペンス劇場などのラストシーンで、崖から飛び降りるシーンにもよく使われるとか使われないとか。


中央の商店街を抜けると、日本海が見える。角度的に見えないが、すぐ目の前に東尋坊がある。


崖の下に止まっているのは、遊覧船。お金を出して載ることで、東尋坊付近をフェリーで回ることが出来る。


東尋坊はこのように、非常に険しく切り立った崖だ。
間違えて足を滑らすと、すぐに涅槃に旅立つことが出来る。悟りを開きたい人にはマジオヌヌメ。


僕は高所恐怖症だけどここまで頑張りました。
かなり怖かった。高さが半端ない。

帰りに商店街でイカの丸焼きを食べて、帰りのバスに乗って帰った。
余談だが、イカの目玉と言うのはとても性能が良く、人間に負けず劣らずの構造を有しているらしい。でもイカの目玉というのは気持ちが悪い。ギョロっとしていて。

午後1時半ごろ、敦賀に到着した。今は便利なことに、敦賀から大阪まで新快速で一本で帰ることが出来るのだ。
新快速が来るまで、敦賀で時間を潰すことにした。
町の中央にある商店街は人気が少なく、しかし道幅はとても広くて、歩道内には何故か童謡が流れいた。「もってけ!セーラー服」でも流せば集客力も大幅にアップするのに。


敦賀は、桃鉄では日本海周りで北海道に行くのに欠かせない重要な土地だが、現実世界では少し冴えない。
昆布が特産として有名で、また、銀河鉄道999の作者である松本零士の故郷としても有名だ。
だから、境港みたいに、道のあちこちに、銀河鉄道999のキャラの銅像が建っている。

時間になったので新快速に乗り、大阪へ帰ってきた。18時だった。
地下鉄で最寄り駅まで移動し、Dの住むマンションに置いてある自転車を取ってから、僕は自宅に帰った。

旅をするといつも、少ししんみりとした気分になる。言い方は悪いが、誰もいない土産物屋で客を待っている店主を見かけると、いつも「この人はもう何年もこうして同じ場所に座り客に物産を売っているのだろうか」と想像してしまう。僕はそういう想像をするたびに、頑張ろうと思う。誇れるほどのたいしたことはしなくとも、せめて、語れるほどの生き方をと。

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