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2012年6月30日土曜日

赤朽葉家の伝説

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約50年に及ぶ赤朽葉家の物語。

3部構成になっていて、1部は語り部の祖母の生い立ちの話。時代は昭和初期。
2部は語り部の母の生涯の話。時代は昭和後期。
3部は語り部自身の話。時代は現代。 1部を読んでたときは、「屍鬼」の1巻(文庫版)を読 んでるようで、正直言うとつまらなかったけど、1部の後半から面白くて止まらなかった。

時代の価値観の変遷の書き方がうまいなあ、と思った。
約50年間に及ぶ物語のため、エピソードは端的にし、時代背景を絡めた心情の変化や、同じ街の変化などを精緻に表現しているため、いわゆるジェネレーションギャップってやつが客観的によくわかった。

村社会から近代化し、高度成長期、オイルショック、冷戦、昭和の終わりと平成の始まり、等々、まるで近代日本史もついでに学べたようなお得感。

それぞれの社会背景を、同じ家、同じ街から捉えてる視線はとても親近感のある視線で、なるほど主観的な文章になるとこうなるのかと思った。

僕らの生きている時代も、それはもう色々なことが起きていて、二度の大震災、アメリカの911テロやイラク戦争、中東の民主化やインターネット時代の到来、中国の巨大化や日本の没落、など、世界史の教科書を分厚くする内容は盛りだくさんなんだけれど、果たしてそれを僕らの日常と関係するように記述しようとしたところで、うまく伝わるだろうか?

主観的な文章にした時点で、庶民の僕らには世界史の教科書に載るようなことは日常にとって些末なことだということがわかる。世界のことより生きることのほうが大事だということがわかる。遠い場所の知らない偉い人より、近くにいる平凡だけど大切な人の方が大事だということがわかる。

周りの環境は変わるけれど、それは僕たちの生活には直結しない。遠くで戦争やテロが起きていても、常識的に考えて僕らが明日命を失うわけではない。だから僕らは日常を続けていられる。
でも時代の移り変わりに対して不変でいることは、緩やかな自殺と変わらない。時代に合わせた生き方が必要なのだ。

赤朽葉家の当主は代々、古くから続く家を守るために、時代の変化に乗ることで生き延びることが出来た。 もしあそこで古いものを捨てられず、新陳代謝せず、旧態依然と戦後間もない時代と同じことを続けていたら、この物語は2部の途中で終わっていただろう。

最終的に生き残るのは、強いものでも弱いものでもなく、変化できるもの。
誰もがよく知るそんな名言を心に刻みながら、僕はこの、50年間を綴った物語を傑作だと認定したいと思った。

2012年6月27日水曜日

アドミニストレーション

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ファーストサーバのデータ消失事件、仕事の形態こそ違えど、データを管理している仕事と言う意味で括れば僕も同じなので、他人事とは言え対岸の火事とは思えない。
原因はつまるところプログラムのバグなんだが、その背景にあるのは社会問題だ。
技術者軽視。コスト優先主義。目先の利益しか見ずに本質的なところで決断出来ない人たち。
組織としての決断は大なり小なり、QCDの法則を忘れず考えること。
あと、技術者を優遇すること。

改札機に自転車の鍵を突っ込みそうになった疲れた頭で考えた。

2012年6月26日火曜日

社畜…

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そろそろ休みたい。
「みんな苦労するものだ」「社会は厳しいものだ」
そうやって他人に押し付けるから、今みたいな閉塞感だらけの社会が生まれたんだ。
…と、こうやってグチってると、「あいつは周りのせいにして楽になろうとしている」「お前より頑張ってる人なんていくらでもいる」なんてことを言われるんだろうね。奴隷の鎖自慢?疲れたなあ。

2012年6月20日水曜日

二次元のあいつらに三次元的に触れる方法

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僕は考える。
スマホが飛ぶ鳥を落とす勢いで普及している現在、次のステップでは、何が起きるのか?

まずは整理しよう。

iPhoneの登場を皮切りに、Android、windows phone(笑)、などのスマホ向けOSが旧来のケータイOSのシェアをどんどんと奪っていった。おかげで、Nokiaはもう瀕死の状態である。

ここで起こったパラダイムの変化は、「通信からエンタメへ」だ。
日本のガラケーが一歩先んじていたパラダイム。

だけれど、スマホ向けOSの持つ技術的優位性は、長年日本が培ってきたビジネスモデルをずたずたにするのには十分だった。

マルチタッチに対応するタッチパネルをケータイに組み込んだこと。
この単純な事実が最もインパクトが大きい。

今までも、タッチパネルの技術をケータイに組み込んだものはあった。DSケータイと呼ばれたアレとかね。黒歴史だよね。

指一本でしか操作出来なかったタッチパネルを、指二本で操作出来るようにした。
指一本の追加。これをどこまで実用的にするかどうかが、日本のケータイ業界の明暗を分けた。

まさに、指先一つでダウンさ。

いや、これが言いたかったわけじゃない。本当にいいたいことは、これから先のことだ。

シングルタッチをマルチタッチに変えるだけで、アプリの幅がグッと広がった。

GPSを搭載していながら、非常に扱いにくかったガラケーの地図アプリの拡大縮小を容易にした。

デジカメ並みの高性能を搭載していながら、きめ細かい修正や閲覧が出来なかったガラケー画像編集の息の根を止めた。

OSの違いによる利便性の向上も大きい。
例えば、通話をしながら写真を撮って、それをメールで送ってすぐに見ることが出来る。

スマホの便利さは記述しだすと枚挙に暇がないが、技術的には指先一つの追加と、タッチパネルの精度向上によるところが最も大きい。

さて、解釈は現実の事実に対してつきまとうもので、結局上記は僕の解釈でしかないのだが、ここから先は僕の考える未来だ。まだ起こっていないが故に解釈の余地のない、妄想と区別のつかない僕の考える未来だ。

2年後、2014年、立体的な操作が可能な、実用的なタッチ(?)パネルが登場する。

試作としてなら既にある。ちょっと僕の最終的なイメージとは違うが。Kinectだ。

Kinectは、平面的に照射される赤外線により対象の動きを判断して、ケーブル不要の3次元的なモーションセンサーになる。

固定点からの対象観測になら、Kinectは十分効果的だ。
例えば、精度は劣るだろうが、3Dゲームの制作現場で使われていたような、モーションアクターの身体のあちこちにつける機器は不要になるだろう。

けれど、これは結局固定点からの観測に過ぎない。
3次元的なタッチパネルを、ケータイみたいな可般式な物体に組み込むことを考えた時、実用性は薄い。
Kinectをケータイに組み込んで同じことをしようとしたとき、ケータイのあちこちから赤外線を照射しないといけないし、仮にKinectの動作に必要な射程距離が超短距離になったところで、「じゃあどうやってボタンとか押すの?」って問題が浮上する。

そう、Kinectは優秀なモーションセンサーたりえるが、無慈悲なタッチパネルキラーにはなりえないのだ。

3次元的なタッチパネルを実装するにあたって取り分け難しい問題は、「ボタンを押す」をどう表現するかだと思う。

平面上のボタンを押すのは簡単だ。
「触れる」ことが押すこととイコールだから。

でも、立体的なボタンを押すのは、「凹ます」必要がある。
アメリカ横断ウルトラクイズをするときに押すあの早押しボタンを考えて欲しい。
立体的な形状を持つボタンを触るだけではなく、地面方向へ押すことで、初めて「押された」と認識されているだろう。

つまり、立体的なボタンを「押す」には、平面的に「触れ」、さらにもう一つの方向に「移動」させることが必要条件になる。

「平面的に触れる」ことと「平面を構成する次元とは別の方向への移動」。

これが立体的なボタンを押す条件だ。

ではどうやればそれをケータイで出来るか?

ここで、前提条件があることに気付く。
ホログラムだ。つまり立体映像。

立体映像を中空に投影し、その映像に対してアクションすることでしか、立体的なボタンを押す術はない。

ここで確認しておくが、立体的なボタンとは言うものの、必ずしも縦・横・奥行きを持っている必要はない。
要するに、平面的な映像であっても、その映像が「奥行きに対して移動した」と認識出来れば良いのだから。

大事なのは、「現実と同じ立体物が投影されること」と「立体物への接触を判断できること」ではなく、「モニターに表示されている二次元映像が任意の距離で表示されること」と「接触を感知すること」だ。
これで、マイノリティ・リポートのようなクールな未来技術ではなく、より実際的な泥臭い技術だということがわかった。

■「モニターに表示されている二次元映像が任意の距離で表示されること」

調べてみると、この手の技術は案外出来てることがわかる。

■「接触を感知すること」

やっぱり本命はこっちか。
ARとしては実現されてるけど、ホログラムとの組み合わせはまだ実例はちょっとしかない。研究試作段階。

この2つを組み合わせることで、「二次元に触れて」「奥行き方向へ移動させる」ことが可能になる。

それが出来れば、あーんなことやこーんなことに利用されるに違いない。

…ぐたぐたと書いたけど、なんで僕がこんなことを考えるようになったかというと、仕事中に「あー、ケータイでコーヒーのプルトップ開けるアプリとか出来るんかなー」と、わけわからんことを疲れた脳で考えたのがきっかけでした。
決してあずにゃんペロペロする方法を考えてたわけじゃないからな!本当だからな!

2012年6月16日土曜日

BTOPC

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ブログの右側に本棚を設置したよ。ブクログのサービスを利用してる。
読み終わったらレビューとか書いていこう。スマホからでもアプリで色々書いたり出来るから便利な世の中になったねえ。
「アルジャーノンに花束を」を読み終えたんだけど、後半の切なさがハンパないね。ネタは知ってたし展開も読めるんだけど、それでもグッとくるものがある。

さて、PCをそろそろ買い換える。
僕は自作PC派だが、思い返せば、今組んでるこの構成、僕が専門学校生時代に友達とでたばかりのCore2を買いに行った時代のものだ。もう5〜6年前になる。
グラボとHDDは1度ずつ替えてるけど、CPUやらマザボやらはずっとそのまま。
LGA775だし、SATA2とか対応してないし、USB3.0とか何それ美味しいの?ってレベル。
新しいCPUやらを買おうとしたら、もうマザボから買えないといけないし、Win7にもしないと後々面倒くさそうだしで、ここで一新しようと思い至ったわけさ。

で、今まで通りパーツをしこしこと買いに行くと、結局CPU・マザボ・OSだけでも5〜6万は飛んでいく。ほかは使いまわせるから、これが最低限なんだけど、なんか損した気分。OSはDSP版とか買えばいいし、メモリとか安いからいいけど、SATA2のHDDとか、内部ケーブルとかも変わっちゃってるしな・・・僕未だにIDE接続ですよ。最近の内蔵ドライブとかの規格見てると、ケーブルがSATAになってる。メモリとかもまだDDR2を使ってるし、もうやめて!僕のPCの構成は化石よ!

そんなこんなで、なるべく安く済ませる方法はないかと無い知恵を絞って考えてると、そういえばBTOはどうなんだと思い至って調べてみた。

結論から言うと、今はBTOのほうが圧倒的に安く済む。 コスパが高い。
メーカー製で13万ぐらいするやつならその半額で変える。
しかも構成が自作PCのような感じだから、僕みたいなやつにとったらあとで好きに弄ることもできる(特殊なケースは除く)。
なぜこんなに安いのか?色々諸説がある。内部事情に詳しい人なら事実を知ってるだろうけど、部外者の僕は憶測するしかない。
  • PCパーツを大量に入荷しているから、店頭で販売している定価より安価
  • サポート料金がない。(ユーザサポートが手緩い)
  • 悪いパーツを使っている。
  • 販売業者のコストが削減できる。
まあ僕の頭じゃ推測できることなんて限られてるけど、洞察できる限りじゃ、要するにPCの原価は安いってことだ。
BTOPCで6万程度のものがメーカー製なら11万程度。その差はメーカー側でのカスタマイズ料金と、サポート料金の差。PCとしての原価がそこまで変わらないのであれば、その値段は謎に包まれているにしろ、店頭販売されているパーツは結構な利益率を上乗せされた料金だと推測しても外れちゃいないと思う。
たしかに、パーツを単品で購入することのメリットは、部品単位での交換が可能と言うことなので、PCの動作がおかしくなった原因さえわかれば、そこを交換するだけで長持ちするので、長期的なコスパは高いと言える。
しかし、僕のような事情で長年変えてなかったやつからすれば、ひとつパーツを変えることは、インターフェイスの関係から、周辺パーツをすべて変えることと同義であり、畢竟、金がかかる。

上記理由により、僕はBTOPCを注文する。PCの構成を考えてる時ってなんだこんなに楽しいんだろう。ハァハァ。クンカクンカ。ハスハス。

2012年6月10日日曜日

3回目の中国出張

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5月28日


1ヶ月前にハワイに向けて出国したときには、何故か金属探知機に引っかかりまくったので、今回びびっていたけれど、何事もなく通過。ターミネータ化した腕はどっか行っちまったんだぜ~ワイルドじゃないだろ~?

つか、思えば最近1ヶ月に1回のペースで海外行ってるな。
ANAの機内食がおいしかった。容器にはマスタードチキンと書かれていた。
予定より10分早く到着。風向きが良かったのかな。飛行機は予定より早く着くことはあるが、電車はない。信号があるかないかの差だろうか。
上海空港は今回は検疫検査があった。あの、体温を測るやつね。
今回はやけに人が多くて、イミグレーションで時間がかかった。
中国は発展が激しくて、来るたびに違う高速道路が出来ているような気がする。
初日から遅くまで働くのが嫌だったので、やることだけやって早々にホテルへ帰った。来るだけでなんだか疲れたしね。

ローカルの店に、外注さんと一緒に食べに行った。
いつも中国にいるときは週に何回か行く店。大体なんでも超おいしい。しかもめちゃ安い。
今日はいつものメニューに加えて、春雨みたいな料理を注文してみた。15元だった。ピリ辛で激うまだった。また今度頼もう…。



追記:
[TED Air] TED講演をお勧めします。 ジェイソン・フリード:なぜ職場で仕事ができないのか
 http://www.ted.com/talks/jason_fried_why_work_doesn_t_happen_at_work.html

飛行機待ちの時に見ていたけど、うーん、これは面白い。
昔から色んな本で指摘されてる通りだけれど、オフィスへ通勤させるのは所詮は経営者や管理者の都合であって、従業員を信用して本当に仕事をさせるのであれば、通勤の必要はないと思う。
「本当に仕事をしてるのか?XBOXで遊んでるのでは?」
と心配するのは当然だけれど、ジェイソン・フリードはこれを「任意の妨害」と呼んでいる。
オフィスでの妨害は、同僚からのどうでもいい話、上司からの無意味な会議など、自分の意志とは無関係のところから生まれる。
仕事への集中は、良い睡眠と同じで、時間を細切れにされて出来るものではない。30分おきに何かしらの妨害があっては、「十分な睡眠を取りました」なんてとても言えない。
自分の意志で自分の仕事をするとき、とても生産的になれるのだが、現代のオフィスはそれには向いていない。
インターネット環境が整っている現代、会議すらも自宅から可能だ。オフィスに通勤するために睡眠時間を削られている人は、通勤の負担を減らすだけでより良い睡眠を得られるし、コンディションが良くなればそれだけ良い仕事が出来る。
この動画にもあるように、1時間おきのタバコ休憩は誰も咎めないのに、1時間おきのYouTube閲覧は酷く嫌われる。もちろんこうしたサイトを規制している会社も多いし、僕の会社もそうだ。




5月29日


6時起床。異常な性能の遮光カーテンのせいで部屋は真っ暗だったけれど、カーテン開けると晴天なり。
食堂に行くと、会社の別部署の先輩(と外注さん2人)がいた。確かこの人、今年のもう半分ぐらいは中国にいるんじゃ…また聞いてみよう。


事務所で、僕が好きなボカロ曲「深海少女」が流れた。着メロだった。しかも「歌ってみた」だった。誰だよ僕に匹敵するキモヲタは…

事務所が暑くてぼーっとしてしまい、あまり仕事が進まなかったので、ホテルに戻ってから少し仕事の続きをしたけれど、また眠たくなってしまって、たいして何もしないまま寝てしまった。そう、僕はテスト前でも眠気に勝てず寝てしまう男・・・



5月30日


くもり。時々小雨。
ホテルで結婚式があるみたいで、ロビーでは朝から人の出入りが激しい。
中国では、結婚式のたびに、盛大な花火があがる。僕も休日にホテルの部屋にいたとき、街のあちこちから花火があがるのを目撃したことがある。結構うるさくて、あれが早朝だったらマジストレスフル。


仕事は、本来の出張目的以外の仕事が多すぎる。
雑用はさすがに回ってこないが、他のプロジェクトの要件やら、将来のシステムの話やら色々だ。一番厄介なのが、別の国の仕事。中国でインドネシアの対応とかするとき、一度日本の僕の端末に接続して、そこからインドネシアの端末に接続したりするから、そんなときに中国の別の場所の端末にアクセスする仕事が舞い込んできたらもう大変。


タイに行ってる上司から直接電話がかかってこないのがまだ救いだ…インドネシアに行ってる先輩からはかかってきたけど。

夜はラーメンを食べに行って、帰りに外注さんがコンビニで買い出しをしたいというから、近くにあるコーヒーショップの横にコンビニがあったからそこに行きましょうと連れて行ったら、コンビニがアップルストアに変わっていた。oh...

ホテルのエレベーターに乗り込むとき、中から3人の中国人が出てきた。真ん中の一人は泥酔して意識がなく、両脇の2人に抱えられていた。どんだけ飲んだらこうなるんだ…
エレベーター内にOWPのあとがあったら最悪だったけど、幸い何もなくて良かった。




5月31日


曇りのち晴れ。
最初に空港で換金した時の金がもう底をついたので、朝食を食べたあと換金しようと思い、フロントに行ったら「we don't have enough money」といわれて断られた。なんだと。昨日も結婚式か何かあったのか、やたら人が多かったから、それが関係あるかもしれない。(追記:中国じゃ結構あることらしい)


会社の総務に換金を願い出たら、「本人確認が要るからついてきやがれ」ってことで近くの銀行まで連れて行かれた。最初に行った銀行は、機械の故障とかで換金してくれなかった。
隣にもいくつか銀行があって(驚いたことに、銀行が6つぐらい隣り合わせになってた!)、二つ目の銀行ではちゃんと換金してくれた。何してるのかわからんぐらい時間かかったけど。


夜は中国式宴会。中国に仕事で来たらわかるけど、こっちの歓迎の仕方や酒の席での礼儀はキツい。「オレの酒が飲めんのか~?」なんて恫喝が可愛いぐらい。
中国では、乾杯!の合図で一気飲みしないといけない。もちろんこっちの酒と言うのは白酒。アルコール度数35度~50度の蒸留酒だ。
これを偉いさんがついできて、乾杯!というのだから、超体育会系の日本人でも、せいぜい8杯が限度。10杯以上なんて少なくともうちの会社では聞いたことがない。また、特に白酒は一人でチビチビ飲むんじゃなく、男を試す飲み物とされているため、基本一気飲みだ。
日本と違い、こっちは酒の席で相手をベロベロに酔わせることに喜びを感じるのだとか。日本は「酒は飲んでも飲まれるな」の通り、節度のない飲み方はいけないとされる。
というわけで、僕みたいな若造は、乾杯の集中砲火の格好の的になる。
まずは部長から。続いて課長。通訳の人。それから中国メンバーが何人が続いた。


結局、白酒6杯、ビール5杯を一気飲みしたところで、僕の意識は途切れた。トイレまで運んでもらったのは覚えてるが、そこから先はほとんど覚えてない。 IMAG1114 

気付くと僕はこれを持っていて、どうやらチャイナ服店員さんが泥酔した僕を見て気を利かせて持ってきてくれたらしい。アルコールの分解に定評のある(?)ブルーベリーの飲み物だそうだ。底にブルーベリーがやたらと詰まっている。

いやあ、これほど酔ったのは初めてだ…今までキツかった宴会はいくつもあるけど、限界を突破したのは初めて。


6月1日

起きたらまだ酒が残っていて、気持ち悪かった。頭痛はなかったけど、酩酊感が全然取れない。腹に何か溜まり続けてる感じがする。白酒飲んでるときもそうだけど、ニトログリセリンを舐めた時のような頭痛は起きない。
だけど今日は休日ではなく仕事なので、起きなければならない。
とりあえずシャワーを浴びてサッパリとした。


食欲はなかったけど、フルーツと野菜だけを朝食として摂った。たぶん何も食べないと危険。
仕事中は、最初は頭がフラフラしててキツかったけど、昼を過ぎたあたりからだんだん元に戻ってきたので、問題なく仕事出来た。


相変わらず本来の仕事以外の多いけど、黙々と一つ一つ片付けるよう心掛け、結果として割と仕事は進んだと思う。

夜は、駐在員の人に教えてもらった日本料理店に行ってみた。ちょっと割高だけど、酢の物を食べることが出来て良かった。二日酔いで気分悪かったときから、あっさりしたものを食べたくてしょうがなかったんだが、あっさりした中華料理なんて矛盾しそうなものがあるはずもなく。

で、肩こりが酷かったので、近くのマッサージに行って60分しっかりほぐしてもらった。
中国式マッサージは、主にツボを刺激して行われる。
タイ古式マッサージは、主に関節を柔らかくするように行われる。
どちらもそれぞれの文化の理にかなったものだが、僕はタイ古式のほうが好きだな。




6月2日


マッサージの効果が絶大だったのか、なまら熟睡出来た。途中、「ヤバい寝過ぎた!」と飛び起きて時計を見たら午前1時半。短時間でそんなにぐっすり寝てたか…
結局起床したのは6時だが、10時間寝た後みたいにクリアに爽快。


というわけで、朝食を摂って会社へ出勤。土曜日も働きますよ。

仕事上で少し厄介な事態が発生。これもし、6月末からのインドネシア出張がなかったら、延長になってたかも、ってレベル。
レガシーシステムの中身がブラックボックスすぎて手が出せない。
月曜日に、関係してそうな人に連絡して話を聞くことになった。とにかく、よくわからない部分に手を突っ込むと被害が出かねないから慎重に行こう。


夜は駐在員の人たちと食事。鳥鍋を出してくれる店で、あっさりした中華料理が食べれるということで評判の店だ。普通の中国の鍋(火鍋という)ではなく、日本式の鍋。
なかなか料理が運ばれてこないので、中国語を話せる駐在員が、「まだ料理来ないの?」と聞いたら、「鳥を今さばいてるからちょっと待っててね」と回答されたらしい。
Oh…新鮮な捌きたての鳥…
ぶつ切りにされた鶏肉が運ばれてきて、鍋に放り込まれた。いや、おいしかった。当たり前だけど、普通に鶏料理。
日本人は足の部分をうまく食べれないと聞いて、よしいざ挑戦と意気込んで鍋から足を取り出してみると、コレがもう完璧にまんま鳥の足で、原形保ちすぎだった。結局、うまく食べることは出来なかった。
酒は白酒じゃなくて黄酒。日本酒みたいな飲み口だね。僕は別に酒に好き嫌いはないので、普通に飲めたけど、駐在員の人は苦手みたいだった。


そのあと2件目をはしごして、ホテルに戻った。
結局、ビール6杯黄酒3杯焼酎水割り2杯飲んだけど、ホロ酔い気分だった。
やっぱりあれだよ、白酒の一気飲みが危険だってことだよ。




6月3日



休日。朝起きると10時過ぎだった。ずいぶん深く眠れた。いつもは8時ぐらいには目が覚めるのに…

朝食バイキングの時間も過ぎているので、朝昼兼用で何か食べに行こうかと思ったが、そういえば近くに観光名所があったぞ確か山の上だったなよし登るか、と急遽思い立ったので、登山してきた。

その山はホテルから徒歩20分のところにある。
昔々、時は13世紀、隣国からの侵入者を防ぎ、また監視するために、山に関と壁を設けたと言われている。ちょうど万里の長城のローカル版のようなものだ。


山の麓には公園があり、そこを通って、ハイキングコースに入る。登る登る登る。ひたすら登る。

IMAG1135
こんな感じの関所

IMAG1136
ちょっと万里の長城っぽい。

100分ほど登りまくったところで、ようやく終着点に着いた。ここから見える景色は絶景だった。天気が曇りなのが残念だった。
ちょうど山を挟んで街の裏側を見下ろす形になっている。大きな湖と田園風景が広がる。

IMAG1146
頂上から見下ろした風景。曇ってるけど綺麗。

ひとしきり観光を済ませたあと、来た道を引き返す。
IMAG1158 

途中、野生の山羊が4匹ほど飛び出してきた。
IMAG1159 

野生の山羊は、仲間を呼んだ。


IMAG1160 
野生の山羊は、仲間を呼んだ。

IMAG1162 
野生の山羊は、逃げ出した。


麓の町まで下りてきたときには足が痛くなっていた。
だが、僕は買い物をせねばならない。
マウスの電池が切れていて使えなかったのでタッチパッドで仕事していたが非効率なので休日に買いに行こうと思っていたわけだ。
ついでに食料も買いたかったので、ウォルマートに行きたかったが、山からだと徒歩30分はかかる。ここはちょっと楽をしよう。タクシーを捕まえて、ケータイでデパートの名前を漢字で伝え、運んでもらった。市内だったら150円ぐらいで大体移動出来るからイイね。


デパートに到着して、電気屋で電池を買う。日本の電池は1.2Vに対してこちらのは1.5Vと、電圧が少し高いけれど、まあマウスなんてユニバーサル製品だし大丈夫だろう、というか他に選択肢もないし、と思いながら購入。結局問題はありませんでした。

その後はウォルマート寄って買い物して、デパートをウロウロ。HIPANDAとかいう服屋のデザインがすごく気に入ったけど、手持ちの金がなかった。換金しないと…

ホテルに戻って引きこもり体制に入り、日本から持ってきた海外ドラマを見たり仕事したり。
supernaturalのガッカリ感が半端なくなってきたな。なんで神々の戦いが肉弾戦なんだよ。もっとこう超常的な能力とかあるでしょ!
ルシファーに対して素手で突進していったガネーシャとか見るとアッチャーってなるわ。瞬間移動とかはよくやってるくせにそれを活用せず走ってパンチとか神々の戦いじゃねえよ。ボブサップでも勝てるわ。
まあ、なんだかんだで面白いから良いんだけど、シーズン2までの旅日記的な雰囲気カムバックしないかなあ。あのロードムービーがすげえ良かったのに。




6月4日


残り5日。今週はしっかり仕事終わらせないとなあ。
タイのほうも佳境だし…まあ、日本メンバーでフォローしてもらいますけどね。中国からタイのフォローとか、色んな意味で無理ゲーだし。


ミクさんの「ロベリア」って曲にハマった。これたまらんな。ギターカッコ良すぎてヘッドバンキングがやめられないとまらない。

今日の仕事は順調。担当でもない調査や仕事がちょくちょく舞い込んではくるけど、出張目的は完遂出来そうな見込みはだいぶ増えた。

夜は一緒に来てる業者の人と、最近ホテルの隣に出来たローカルのレストランで晩飯。ここのメニューには写真がついてなかったので、僕は心配した。以前そういう店に入って、何もわからなかったので適当に頼んだらとてもヘンテコなものが出て来て、それがまたわけのわからない味で食べれなかった経験があるからだ。
だけれど今回は業者さんが知ってる料理を注文してくれたので安心した。一つだけ、ウェイトレスさんが指さしてくれた料理をジャパニーズノリで頼んでみたが、美味しいものが出て来たので良かった。
結局、3品しか注文してないのに、全部食べきれなかった。量が多いんだよ…。
チャーハンを頼んだとき、「2つアルか?!」(訳:水上)と聞かれたけど、絶対多いと思ったから一つにしたが、正解。二人でも食べきれない量だった。
前に嫁と日本の中華料理店に行った時に食べたユーリンチーという食べ物が忘れられなくて、「ヨウユーリンチーマ?」と言ってみたけど首を傾げられた。業者さんが「あれは確か台湾の食べ物じゃなかったかなあ」と言う。マジかよ、日本の中華料理は中国のも台湾のもごちゃ混ぜかよ。
仕方ない、ユーリンチーは諦めよう。


僕らが店をでた直後、30秒後には店は消灯してた。
なんだよ、僕らは滑り込みセーフかよ。つか早いな、まだ20時過ぎだぞw中国人の夜は早い…


6月5日

最近眠りが深いのか浅いのかよくわからない。目覚ましが鳴る前に目が覚めるのはいつも通りだし、起きれないこともないんだが、二度寝してるときの身体の重さがいつもより重い。

まあ一度起きたら問題なく動けるから、ちょっと疲れてるだけってことにしておこう。

仕事は概ね問題なし。明日が山場だが、事前調整は既に済ませた。あとは僕のほうで可能な限り石橋を叩くだけだ。
プログラマーであり、アーキテクトであり、社内SEでもある僕が出張して仕事をするということは、出張先での細かなことは全て自分の責任の範囲内において好きなように小回りを利かせれるということなので、僕としては非常にやりやすい。
もちろん、自分の裁量に任せた仕事ばかりしてるといけないので、定期的な上司への報告や、判断内容の事後確認は怠ってはいけない。それをすると「勝手に仕事を進めてしまう」ことになり、間違った判断の発覚が遅れてしまい、そういう事態は一番リカバリーが難しい。鉄を打つのは熱ければ熱いほどいいし、問題の芽を摘むのは小さければ小さいほど容易い。
明日うまく行けば出張の目的は達成だ。




6月6日


結局ホテルに戻ってからも深夜1時まで最終確認をして、眠気がピークになったので一旦寝て、5時にもっかい起きて続きをした。
システムの導入は気をつけなければいけないことが多い。僕は100%は目指さない。いくら時間があっても足りないから。でも80%以上は保証したい。
まあ、問題点は洗い出せたから、ほぼ大丈夫だろう。
きっとうまくいく。
これがうまくいけば、しばらく中国に来ることもない…のかな?




システム導入は完了、特に問題はなかった。
今回の出張目的は7割達成した。残りは僕が帰国してからもこっちに残っている業者さんに任せる。もちろん、日本からフォローはする。


だが、僕の頭を悩ませるのはそれじゃない。
今回の出張の目的ではないけど、出張時にやっておきたいことが、結果的に出来なくなったので、それを偉い人たちにどう説明したものか悩む。


僕の立場は当然弱いので、いくら相手が正論を言ってきても、それを正論で返すわけにもいかない。(そんなことをすればただの感情論、または立場を利用したパワハラへと発展する)
例えば、「金払ってんだからちゃんとやってくれなきゃ困るよ」と言われても、厳密には「この仕事をするだけの金はもらってない。元々計画外作業だから」とは契約上言える。
僕が完全な部外者なら、割とそういうべきかも知れないけど、同じグループ会社なので言いにくいところがある。このへんはあまり言えないけど。


要するに僕が出来ることは、出張の目的を明確にし、今回完遂出来なかった作業についての問題点とリスクを明確に説明することしかない。
これを言うと愚痴になるけど、「金払ってんだから…」と言われたとき、「思考停止ワードだな」と思った。現実問題として、いくら金を払われても、時間や人は有限なんだから、リソース的に出来ることにも限りがある。ましてや多忙を極める最近、金を多く払うからといわれても断ることもあるしね。
で、ましてや今回の出張目的は完全にクリアしつつある。何度も言うが説明が必要になった残件は計画外作業でしかない。金のことを言うんだったらお門違いだ。
…とはいえ、この計画外作業も実際のところは弊社の不始末とも言えることだから、いくら本件が僕が入社する前の話だとは言え、「会社として」の話をされると黙らざるをえない。「自分の入社する前の話なので知りません」では通らないところが辛いね、本当なのに。


ま、とりあえずは資料作りだ。最後の砦は上長に直接交渉してもらうことだけど(実際僕の権限なんてたかが知れてるから)、なるべく僕だけで話を終わらせたい。



6月7日



残すところあと1日!

今までの出張の中で一番しんどい気がする。
疲れがめちゃ溜まってるのがわかる。
5月の結構なハードワークのあとだからだろうか?それとも、加速度的に多くなる仕事に圧殺されそうになっているから?
タイに出張中の上司はタイの仕事しかしてないのに、僕は中国にいながらタイと日本の仕事をしているなんて不公平だ。インドネシアにいる先輩からも電話かかってきたり、5年目にもなるとさすがに忙しくなってくるね。


6月8日


最終日!
いつもより早起きして荷造りをした。とはいえ、服と洗面用具をまとめるぐらいしかないので、すぐ終わったが。あんまり出しっぱなしにしているものがない。

えらい人たちにご挨拶をして、関係者とは最後の打ち合わせをして、最後の最後まで日本から「○○を調べてきてくれ!」なんて頼みごとがあったけれど、なんとかキリのいいとこまで終えることが出来た。

再見!と世話になった中国人に別れを告げて、タクシーに乗り込む。良い車なので快適だ。
高速道路で約2時間。上海空港に到着する15分前まで、僕は爆睡してた。


上海空港でチェックインと出国手続きを済ませる。
今回も金属探知機には引っかからなかった。上々だ。ただ、イミグレーションで出国カードを出すのを忘れてしまっていた。ああ、あったなそんなの…


上海空港内の免税店でいくつか買い物をして、小腹が減ってたから余ってる元で何か食べようかなと思ったけど、さすが空港内、どんな食べ物もクソ高い。アイスクリームで800円する。ヤバい、定食でも食べようものなら破滅する。

まあ、機内食も食べれるからちょっとの間我慢するか。搭乗口の前で「アルジャーノンに花束」の続きを読んだ。

結局、今回の出張ではあんまり本は読めなかったなあ。ブリーチは34巻まで読んだけれど、小説のほうがサッパリ。日本での通勤時に本気出す。

というわけで、ただいま日本。美味しい白ご飯が食べたい。TKGに醤油をかけてガツガツ食べたい。あああああ。